おいでよ、アートスクール!(後編)

皆様、いかがお過ごしですか〜?今年も、はや折り返し地点がやってまいりました。いやいや、早すぎない?今年の予定、まだ何も成し遂げていない気もするのですが、全世界的にややこしい状況ですので仕方ないっちゃーしかたない。色々余計な事を考え出すとドツボにハマリやすい状況ですので、元気ならそれでヨシのスタンスで、後半戦もゆるゆる参りたいと思います。

さて、本日はめずらしく、さっそく本題に入りたいと思います。前回、私の母校School of Visual Arts(以下SVA)のファインアート科マスターコース(大学院)の様子と1学期の流れをご紹介したのですが、本日は、学期末イベントと卒業までの流れについてお話したいと思います。

アート系大学の実技授業の学期末試験が、どのように行われ採点されるのか、疑問に思っている方、結構いらっしゃるのではないでしょうか。前回リスト化してチラっと流れをご紹介したのですが、SVAの大学院ファインアート科では、各学期末ごとに、外部に向けてスタジオを開放し、展示発表する「Open Studio」というイベントが行われます。その前に「Tirm Review」というプレゼンテーションが行われ、そこで実技の成績が決まります。

自分のスタジオを片付けたり、ペンキを塗り直したりしてリフォームした後、数ヶ月間つくりあげた作品を展示します。そこに自分の担当教授以外の2名の教授陣が訪れ、その前で作品についてのプレゼンテーションを行います。ここで、アドバイスをもらったり、するどいツッコミと戦ったりして、とことんヤリ合います。ここでの評価が、1学期の実技の成績となります。

Tirm Reviewが終わった後の4日間、ファインアート科祭りである「Open Studio」が行われ、スタジオは一般開放されます。ここには生徒の友人や家族だけでなく、NYの大手ギャラリーや美術館関係者、各メディア、コレクターも招かれるため、みな非常に気合が入りまくります。

とはいえ、全工程が終了した開放感からか大半がおバカになり、Open Studioは終始とてもリラックスした楽しい雰囲気で行われます。オープニングに欠かせない酒類の持ち込みも可能ですので、いい具合に打ち上げ状態となり、帰宅は毎回深夜を回ります。

このOpen Studioは在学中、学期末ごとに計4回行われるのですが、2年最後の春セメスターだけは、卒業を控えているためイレギュラーなスケジュールで進みます。

まず1月、最後のセメスターが始まっていきなり開催されるのが「卒業制作展」です。「Thesis Show」と呼ばれるもので、学校が所有するChealseaのSVA Galleryで展覧会が行われます。

1学年2チームに分かれ、それぞれ別日程で予定が組まれます。各チーム事に外部からキュレーター(博物館・美術館などの、展覧会の企画・構成・運営などをつかさどる専門職。また、一般に、管理責任者・デジタル大辞泉参照)を招き、一緒に展覧会を作り上げていきます。

準備中の皆様。こんな感じで、相談しながらみんなで作り上げていきます。

一生懸命準備中のアタクシw。

オープニング当日。大盛況でございました。いや〜盛り上がった盛り上がった!

そして、卒業に向けて欠かせないのが「卒業論文」です。終始遊んでいるように見えても、一応「マスターコース」ですからね。論文提出は欠かせません。とはいえ、その規定内容はめちゃくちゃザックリで、はっきりいってチョロすぎw。アメリカの標準規定であるレターサイズ(ほぼA4)最低5枚以上、文字数制限ナシ。ザッツオーーール!小学生の夏休みの読書感想文かよ!実技で忙しい生徒の事情、学校側もワカッテル〜!しかも、提出形態は不問、とならば、普通にペーパー出してもつまらんだろうということで、私が提出した卒業論文がコチラ!

自分の7つの創作哲学を、7という数字や色に当てはめて書き記した内容なのですが「別名レターサイズ5枚分を煙に巻く作戦」です。コレだったら、見てくれだけで規定数とかどうでもよくなりませんか?ちなみに、前回スタジオで行き倒れていた友人Jは、元海兵+写真家の経歴を生かした自伝を本にしていましたし、マキグソペンの彼は、大量のオネーサンのヌードや彼女のオッパイ(現嫁)写真と手書きメモ(ノートの端切れ)を、アルミの弁当箱に詰めて提出してました。おもしろけりゃどうにでもなるのがSVAマスター流卒論です。

以上が、SVAの大学院ファインアート科の2年の流れとなります。年齢も国籍もバックグラウンドも職歴もバラバラの人たちが、何の因果か一同に集まり過ごした2年間。私にとって何が一番素晴らしかったかと言いますと、とにかく「素の自分」を知れた事だと思います。別の誰かの価値観や考え方に捉われていると、必ずどこかで制作が行き詰まります。そこを丁寧に掘り下げていく事で、余計なモノが一つずつはがれ、自分オリジナルの世界にたどり着きます。Bearömixxのクマたちも、そうやって生まれてきました。

Bearification(擬熊化・造語)というシリーズも、学校のスタジオの落書きがきっかけで生まれました。自分の所有物に名前を書く代わりにクマの顔を描いたら、思いがけず大好評で、気をよくした私、ありとあらゆる学校の備品に落書きしまくったのが、プロジェクトの始まりです。怒られるかと一瞬怯えたのですが、結果は「いいぞ、もっとやれ!」でしたw。1年ごとにリフォームされるので、どうせ消されるし思っていたのですが、なぜかリノベーション後も奇跡的に残留したクマたちです。

もし、アメリカの大学院でファインアートを学びたいと思っている方がいらっしゃいましたら、ぜひ、我がSchool of  Visual Artsも候補の一つに入れてみてください。一つ言い忘れていましたが、縄張りである西校舎の8階、9階は、私が卒業した2年後に大改修が行われ、今では超〜〜〜美しいギャラリーの1フロアのようになっております。私在籍時のうなぎの寝床のような汚らしさは皆無でございますので、ご安心くださいませ。なお、卒業式には、憧れのローブも着れますよ。ただし真っ赤だがな!

それでは皆様、安全に楽しく過ごしてくださいね〜。

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